プロジェクト概要

 機能材料の多くは、母物質の中のドーパント」ヘテロ界面」ナノ物質」
などの局所的な 構造体、すなわち
「活性サイト」
が機能発現の重要な役割を担っている。しかし、この活性サイト構造が正確に決定された例はほとんどない。我が国は、その活性サイトを狙い撃ちし、
「原子分解能で3Dイメージング」
できる技術の研究開発で現在世界のトップにいる。3D活性サイト科学は、高度な試料合成技術や最先端計算機科学からのニーズに 合致した次世代計測技術を構築し、学理的に融合させ、グリーンサイエンスやライフサイエンスなる壁を打破した新物質科学を創成する全く新しい基盤的新学術領域である。 
触媒太陽電池スピントロニクス材料、そしてタンパク質分子等、極めて幅広い試料対象において、「活性サイト」がどのように周辺原子と協調し3次元的に機能発現しているのかを、計測根拠のある深い探究で新たな学理と新規デバイス創出の道筋を切り拓く。

融合研究の必要性

 我が日本では、主に3つのカテゴリーに分類される3D原子イメージングが 開発されてきた。

(1) 光電子蛍光X線を利用するドープ原子ホログラフィーで、吸着物や不純物周辺の原子配列を数 nm 領域で可視化できる。

(2) 表面X線回折に基づいて表面・ 界面の機能発現に関与する原子配列を再生する 表面・界面ホログラフィーである。

(3) ナノ構造体イメージングは、電子回折パターンに 位相回復法を適用して原子像を再生する手法で、 ナノ粒子やタンパク質1分子をも計測できる。

 これらを用いれば、触媒反応の場合には
反応中心原子周辺を(1)で、
ナノ粒子触媒と基板の接合界面を(2)で、
ナノ粒子そのものを(3)
で解析するというように、活性領域 の全容が解明できる。
このように複数の測定法を用いれば、多面的に活性サイト中心を 測定・解析することが可能となり、従来の研究領域を越え、一つの学理として体系化統合化が可能になってくる。

何を明らかするのか

1) 一つの試料に対して複数の 3D 原子イメージング手法を適用し、総合的なデータから最 新アルゴリズムを用いて活性サイトの3次元情報を得る。さらに、再生像を基に第一原理 計算で安定性を調べるとともに、3D局所構造が発現する特異な電子・光物性、伝導性、 反応性を明らかにし、より望ましい性質を持つ3D局所構造をデザインする指針を与える。

2) 困難とされたソフト及びバイオ系マテリアルをも含めた幅広い物質に対して大気圧に 近い状態で計測が行え、かつ、触媒反応等での高速時分割計測できる計測手法を実践する 

3) 得られた情報を一元化できる活性サイト原子構造データベース(逐次 web 公開、世界初) を構築し、各手法の高度化に役立てると共に統合的な物質科学理解の礎とする。 

4) 公募研究によるものを含め、タンパク質分子、有機太陽電池、触媒、スピントロニクス 材料などの多くの機能材料に対して積極的に計測を行い、注目される原子活性サイトの役 割を深いレベルで理解し、新しい材料創製に向けた知見を提供する。


学術領域の発展の方向性

 本新学術領域を発展させて、 研究者間の交流と活性化を図り、異分野の活動的な研 究者が多数、本分野に参画できるようにする。更に海外研究者との交流や海外施設利用も含む共同研究も行う。我々が率先して、欧米だけでなくアジアを含む海外での主導的な役割を果たし、国際的研究コミュニティの形成をも目指す。また、「3D活性サイト科学」分 野を大きく広げ、この技術を産業界とも連携し広く普 及させる。このようにして、学術領域としての成果を海外や国内外の産業界へ発信することにより、国際的存在感を確固たるものにし、日本の科学技術の大幅な向上・強化を行う世界拠点 Center for 3D active site science を形成する。