代表挨拶

新学術領域「3D活性サイト科学」領域代表
奈良先端科学技術大学院大学 教授
大門 寛






 本新学術領域「3D活性サイト科学」は、文部科学省の科研費として平成26年6月に採択され、平成30年度までの5年計画としてスタートしました。この文章を書いている平成30年4月では、あと1年を残すのみとなりました。100名程度の大きな組織ですが、平成29年度には新たに16名の公募班も加わり、大きな成果創出に向けて、多くの連携融合研究が進んできています。昨年度から国際活動支援班の活動が本格化し、スウェーデンのMAX-IVで実験装置を導入する協議が具体化しています。国際会議も、平成27年4月にドイツで、平成28年7月にスイス、平成29年度はスウェーデンのMAX-IVに近いLund大学にて、国際アドバイザーの方にも参加していただいて開催しました。
 本領域の内容は、ドーパント、界面、そしてナノ物質等、機能性材料中の機能発現の重要な役割を担っている非周期の局所構造「3D活性サイト」について、我が国が誇る「原子分解能ホログラフィー」による3D原子イメージング法を適用し、第一原理計算も駆使し、「3D活性サイト」の機能性を原子レベルで明らかにすることです。このような活性サイトの周りの局所構造は、機能性に本質的に重要な役割を演じていることがわかっていたにもかかわらず、非周期であるために通常の原子構造解析手法であるX線回折法が適用できないため解らずにいたもので、本領域の進展によって初めて明らかにされていくものです。これらの非周期の局所構造を解析する4つの手法「光電子ホログラフィー」「蛍光X線ホログラフィー」「表面界面ホログラフィー」「電子回折イメージング」を駆使して進めています。これらの手法は、最近日本において解析精度が飛躍的に向上したもので、世界を断然リードしています。
 「3D活性サイト科学」という新しい局所物性学の新領域を開拓し、ソフト・バイオ系マテリアル計測や、触媒反応等での高速時分割計測まで取り組みを進めています。得られた情報を一元化し、活性サイト原子構造データベースを構築も始まり、全く新しい材料創製への知見を世界に提供することを目指しています。
 総括班においては総括班会議を開催して、領域アドバイザーと学術調査官の先生方の助言を頂きながら、「研究戦略策定」、「大型実験施設コーディネート」、「若手育成」、「広報活動」の運営組織を設けて、SPring-8に共通基盤装置プラットフォームを建設・運営して高度な実験環境を整えるとともに、SPring-8の課題申請のサポートや公募班の研究者への実験や解析のサポートを行って融合研究を推進しています。公募班キックオフミーティング、成果報告会、サイトビジットにおける現地での研究打合せを行い、領域の共通の目的意識の徹底と融合研究の推進を行いました。また、春の学校、多くのアウトリーチ活動やチュートリアル講義を開催するとともに、優秀な若手研究者や学生にポスター賞を授賞して若手育成に取り組んでいます。多くの研究会を共催・協賛するとともに、学部生向けの教科書を出版して、本領域の社会普及に努めています。
 領域がスタートしてからの研究成果について要点を述べます。各計画研究班においては、最初に設定した3段階の研究目標(課題1,2,3)が着実に進んでおり、新たに課題4を設定した計画研究班もあります。平成29年度は、多くの研究者が組織的に取り組んだ成果が現れ、Science Advances, Scientific Reports, Nature Communications, Nature Chemistry, Nano Letters, Physical Review Letters, Physical Review B, Applied Physics Letters, Applied Physics Express, J. Am. Chem. Soc., Chemistry Letters, The Journal of Physical Chemistry Cなどのインパクトファクターの高い雑誌に論文が受理され、多くのプレスリリースや、受賞、招待講演がありました。また、今まで積み上げてきた成果が評価され、中間評価ではAの高い評価をいただきました。
 特筆すべき成果としては、J-PARCを利用した中性子によるホログラフィーがScience Advancesに発表され、中性子で局所構造を見ることができる測定法が開発されたことです。J-PARCの中性子線はパルスで出てくるため時間ごとの測定によって多波長のホログラムが一度に測定できる、測定対象の元素も水素などの軽元素が見える、スピン分極しているためスピン構造も解析可能である、という多くのメリットがあります。今後のJ-PARC中性子の新しい利用方法として大きく期待されています。
 残りの1年の間に、新学理、新産業の創出に向けた新しい知識の蓄積を加速度的に進めていきたいと思っておりますので、今後ともご指導ご支援のほど、よろしくお願い致します。