活性サイトとは

「活性サイト」とは、新しい視点から物性発現機構を探索するためのキーワードです。

人間にとって有用な機能を物質に発現させるために、人は様々な工夫を凝らします。例えば、半導体の結晶にわずかに不純物を入れる事により、P型とN型の半導体を作り出し、これによって電子の流れをコントロールする事ができるようになりました。また、鉄に様々な添加剤を加える事で、ステンレスのように錆びにくくなったり、また、硬化したりします。

わずかに添加した原子が大きく物質の性質 -物性- を支配するのです。

触媒では、ある特定の原子が存在する場所で化学反応が進むと考えられています。これは生物も同様で、光合成を行うタンパク質では、Mn原子がある配列になっている場所で反応が進んでいると考えられています。また、表面を薄い膜で覆うことで、界面にある原子によって、新しい機能(磁性や触媒)が発現することも良く知られています。また、粒子サイズをナノスケールにすると、特殊な原子配列となり、新しい物性が発現することも発見されています。

 このように、物質の中で、機能発現を担う特殊な構造を持つ原子が「活性サイト」であり、これに対する研究がとても重要です。

 添加をする前の、母材自身の原子配列に関する情報は科学全般に大きな発展をもたらしました。しかし、添加した原子が、母材のどこに入ることで機能発現するのか? という問いに対してはほとんど研究ができていません。これは、並進対称構造を持たない活性サイトはX線回折法が使えないため、計測根拠を持って探究する学理は今まで存在しなかったためです。

 例えば、前述の半導体産業に欠かせないボロンドープシリコンにおいても、ボロンの局所構造観測は殆ど手つかずのまま。「3D活性サイト」構造が正確に把握されないまま、手探りの状態で材料開発されています。今後、高度なドープ技術、界面アーキテクトニクス、量子ドット作製技術を駆使する先端材料分野における熾烈な国際競争を勝ち抜くためには、ドーパント・界面構造・ナノ構造体における「3D活性サイト」構造の精密な評価に基づいた物質デザインが必要不可欠となるでしょう。

 幸い日本では、物性を支配する局在構造を選択的に狙い、三次元原子配列を正確に決定できる3D原子イメージング技術群が活発に研究されてきました。

①光電子や蛍光X線を利用するドープ原子ホログラフィー

②表面X線回折に基づく表面・界面ホログラフィー

③電子回折パターンに位相回復法を適用したナノ構造体イメージング

などです。これらにより、多面的に「3D活性サイト」を測定・解析することが可能となります。そして、それぞれの研究領域を越え、一つの学理として体系化統合化していくのが必須なのです。